ほぼ屋台
Just like a stallゆげ焙煎所 西宮北口店 / yuge roastery nishkita
- 業 態
- コーヒーショップ
- 所在地
- 兵庫県西宮市
- 開業時期
- 2020年11月
- 受注形態
- 設計・重点監理
阪急電鉄「西宮北口駅」の南側に位置しています。近隣に兵庫県立芸術文化センター、阪急西宮ガーデンズなどの大型施設がある賑やかな場所です。コンセプトは「ほぼ屋台」です。隣接する公園や駅前のターミナル空間を広場に見立て「そこにいつもの屋台が来ている」感覚でデザインしました。テナントは屋内空間ですが、元々、南北両面に出入口がありテナント内部を通り抜けることができました。そこで、テナント空間の半分を歩道、半分を屋台と見立てました。
周辺は公共性が高い環境で、特に隣接する兵庫県立芸術文化センターの前に広がる「高松公園」に集まる人々が彩る風景が印象的です。コンサートの開演を待つ人、散歩の途中にひと休みする人、ダンスの練習をする人(=芸文センターの大きなガラス面をミラー代わりにできるため)、学校帰りおしゃべりに夢中になっている人、、、様々です。皆、立ったり、座ったり、踊ったり、ボーッとしたり、はしゃいだり、眺めたり、寝たり、、、多種多様な人間模様を垣間見ることができます。(最近はこういった人々が自由に過ごすことができる空間が街中からずいぶんと減ってしまった気がします。)
まず、この印象的な公園=公共空間との関係性を構築することからデザインをはじめました。
通り抜けできる空間
目的があり急いでいる人も、時間に余裕がある人も、ふとコーヒーが飲みたいなと思った時、いかにサッとお店に入り、コーヒーを選んで買うことができるかに注力しました。
テナントはもともと北側の公道と南側の建物内共用通路の間を行き来できるように自動ドアが2カ所ついていました。店舗空間として、販売スペースやバックヤードの面積を少しでも広めに確保するため、一方の自動ドアのみを使用し、もう一方を閉鎖、もしくは撤去することもできました。しかし、テナントの総床面積が小さいため、出入口を1カ所にすると人が溜まる袋小路のような空間になり、お客様の動線がぶつかり合うことでスムースな接客が困難になる可能性が想定されました。そのため、南北両面の2カ所の自動ドアをそのまま利用し、2カ所の自動ドアの間の空間を「歩道」、それ以外の空間を接客スペース+厨房+スタッフルーム=「屋台」としてゾーニングし、通り抜けができる空間としました。
ただし、効率だけを追求すると味気ない空間になってしまうため、「歩道」スペースの一部にお客様用カウンターを設けました。「ちょっとの間、ここに居ようかな & 居てもいいんだな」といった気持の拠り所として機能させています。
屋台っぽさの演出
屋台感を演出する要素として、お祭りでよく見かける「裸電球」を模した電飾を考案しました。縁日に建ち並ぶ屋台に軽い気持で思わず立ち寄ってしまう心理的な効果を期待しています。この電飾が無い方が、よりシンプル&ミニマムな空間になったかもしれません。しかし、あえてユーモラスな要素を取り入れ、シンプル&ミニマムな空間をドレスダウンさせることで「親しみやすさ」や「おもしろさ」を表現しました。
おいしいコーヒードリンクを買ってさらっと飲みたい人、顔見知りのスタッフとちょっとした立ち話がしたい人、自分の趣向にあったコーヒー豆をじっくりと相談しながら選びたい人、おいしいコーヒーの淹れ方を教えてほしい人、様々な人々に開かれています。この場所だからこそ生まれたデザインです。
「サードプレイス」「コーヒースタンド」ならぬ「ほぼ屋台」として縁日気分でご利用いただければと思います。
グラフィックデザイン:株式会社fine 日下れいか
施工・現場監理:株式会社GLORY ARCHITECT WORKS 富里元康・光田夏実