スッと背筋を伸ばす
Be politeゆげ焙煎所 夙川店 / yuge roastery shyukugawa
- 業 態
- コーヒーショップ
- 所在地
- 兵庫県西宮市
- 開業時期
- 2019年11月
- 受注形態
- 設計・重点監理
「ゆげ焙煎所」の2号店です。阪急電鉄神戸線「夙川駅」から徒歩3分ほどの立地にあります。河川沿いの緑が美しい、閑静な住宅地の中に位置しています。お施主様が開業時から大切にされている「心に響くコーヒーを」というコンセプトが、着実にお客様に浸透しつつあるようです。そこで改めて「人とコーヒーの関係性」に注目し、デザイン面でどのようなサポートが可能かを考えることからデザインをはじめました。
まず、店主自らが選び、焙煎したコーヒー豆の美味しさを、いままで以上に丁寧に伝えることができるコミュニケーションの場が必要と考え、お客様とスタッフが正対する対面式のカウンターを設えました。ここでは、お客様が自分の趣向にあったコーヒー豆を選ぶ相談ができたり、自宅でおいしいコーヒーを淹れるための抽出教室が開かれたり、プロ仕様のエスプレッソマシンを身近に観察できたりします。
カウンタートップを自由に使う
今回、導入したエスプレッソマシンはアンダーカウンタータイプの「modbar」です。よくコーヒーショップのカウンタートップで見られる大きな筐体(きょうたい)は姿を消し、カウンター全体の見晴らしがよくなったことで、お客様とスタッフが視線を交わしやすくなりました。
シンプルでミニマルな空間こそ素材にこだわる
カウンターの天板は、奈良県の大台ヶ原からやってきた楢(ナラ)材です。樹齢600年、乾燥に約30年を要した銘木です。節割れや虫食い部分にはあえて別種の木を使った象嵌(ぞうがん)を施しました。空間全体は、シンプルにミニマルに設えていますが、人が近づき手で触れるカウンターの天板や、商品陳列棚、ベンチには触覚的な自然素材を使用しています。あえて職人の手跡を残した部分もあります。観念的なシンプルさと即物的な複雑さを共存させることで、実店舗を訪れてこそ体験できる「記憶に残る空間」をつくり出すことを目指しました。
1号店(本店)は、落ち着いたひと時を過ごしていただくため「ケ」の空間づくりを目指しましたが、2号店では、スッと背筋を伸ばす緊張感を楽しんでいただく「ハレ」の空間づくりを目指しました。ただし、スタッフのみなさんのフレンドリーな笑顔は変わりません。丁寧で寛容で愉快ないつもの「ゆげさん」です。両店それぞれの旨みを嗜んでいただければと思います。
グラフィックデザイン:株式会社fine 日下れいか
施工・現場監理:design labo COMMON SENCE 山本茂臣・中岡佑介